け、奥の待合いスペースに小走りで足を進める。
 家族連れや友達同士など観光旅行客と思われる人たちが各々談笑している中で、遥はひとりぼんやりと窓の外を眺めていた。足元には黒いスポーツバッグが置かれている。
「よかった、間に合って……」
 澪がほっと吐息まじりの声を落とすと、遥は振り向いて目を丸くした。
「澪……なんで……?」
「黙ってひとりで行くなんてずるいよ」
「見送り、ってわけじゃないよね?」
「私だって傷心旅行したいんだからね」
 澪は冗談めかしてそう言い、左手を腰に当てながらニコッと笑ってみせる。
 一拍の間のあと、遥はわざとらしく肩を上下させながら盛大な溜息を落とした。そして腕時計にちらりと目を落とすと、別に傷心旅行じゃないけどねとぶつくさ言いつつ、スポーツバッグを肩に掛けて椅子から立ち上がった。

 この日はトラブルのため出航が二時間遅れになっていたらしい。そうでなければ、澪がどれだけ急いだところで間に合わなかっただろう。何も調べず、何も考えず、とにかくを追いかけてきたのだが、そのことが逆に功を奏したといえる。
 悪運だけは強いね、と遥は呆れたように揶揄したものの、澪が同行することに反対はしなかった。それどころか、窓口で二人同室になるように乗船券を手配し、宿にも電話を入れて一人追加したいと頼んでくれていた。しかも、澪の財布には三千円ほどしか入っていなかったので、交通費も宿泊費もすべて遥に出してもらうことになった。
「たった三千円で小笠原まで行けると思ったの?」
「だって急いでたんだもん。ちゃんと返すよ」
 嫌味を言いつつもきちんと面倒を見てくれる彼は優しい。もしかする